読切駄文
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ロボットの孤独
 おそらく世界的に最も有名なロボットキャラクターの一人といえば、ドラえもん。ドラえもんをアルシャードガイア的にみれば、疑うことなくリターナーでしょう。それでは、そのリターナーとしてのドラえもんを大人の解釈で見ればどうなるか、それが今回のお話。意外と、適材だったりするのです。
 リターナーとは何ぞや、アルシャードガイアに詳しくない方々にかいつまんで説明いたしますと、未来からやってきた人々・・・・これ以上の設定云々はあまりありません(笑)
 まず、未来人が過去に長期滞在する際の問題点をあげると、以下のことに集約されるでしょう
・SF的に有名すぎるアレ、タイムパラドックスの問題
・時間移動がそう簡単でないと言うこと。科学技術や経済的な負担、倫理やそのときの法律の問題など、障害となるものはさまざまです。
 まずは、時間移動がそう簡単に行えないものなら、そこに生身の人間を送り込むことにかなりの問題が生じないだろうか?
 まず仮にのび太君支援のために送られたのが、生身の人間としましょう。ドラえもんの状態を見ると、のび太家にほぼ入り浸り、ほとんど付きっ切りで支援している状態です。そんな状態が生身の人間にできるのか?
 知り合いといえば、ほぼ皆無。世界のどこを探しても、そのご先祖様以上に親しい人などいないはず。恐ろしいほどの孤独ではないのか?そしておそらく文化文明も自分の居た世界とは、確実に違う世界のはずです。リターナーにとって過去の世界は、全くの外国以上に異質な世界なのです。
 果たしてそんな孤独のストレスに生身の人間が耐えられるものなのだろうか?
 ならば、そのようなストレスに無縁のもの、端的に言えば、そのようなストレスが存在しない存在でもないと、ドラえもんのようなことはできないのです。
 もう一つの問題が、タイムパラドックスの問題。ドラえもんには、それについても巧妙な計算が行われているような気がするのです。
 まず前提がいくつかあるのですが。
壱:社会・経済・自然環境の変化が極僅かな場合、タイムパラドックスを黙認される。
弐:タイムパラドックスの影響をシミュレートする方法がある。
参:一定以上の人々が関わる人的・経済的損失を、前提壱に反しない限り救済することを許可する。
 少々疑問を感じたことはないだろうか?のび太君を支援する目的のロボットなら、もっと高性能のロボットを派遣するべきなのではと。
 ここには、未来世界の大人の事情が多少想像できるのです。
 普通のSFでは、ご先祖がどんなにダメダメ人生を送るのがわかっていても、勝手に過去の改変をするのはまずいはずなので、先ほどの前提壱と弐がドラえもんを認めさせるこじ付けとなるのです。(笑)
 おそらくお役所の認可のもとに行われるドラえもんの派遣ですが、お役所がもっとも気を使うのが前提壱でしょう。例えば、のび太君がいきなりビルゲイツみたくなってもらっては困ると言うことです。
 と言うことで、人生上の致命的なマイナスを回避し、平凡なサラリーマン程度になってもらうには、ドラえもんの性能をある程度抑える必要があるのです。その妥協の結果が、ドラえもんのあの性能となると思うのです。
 余談ですが、一度ドラミがのび太君の支援を行うという話があるのですが、確かに効率のいい支援を行うことができるのです。しかし、のび太&ドラえもんの、相性のよさに引き下がると言う落ちとなります。
 このことはむしろ、効率のよすぎる支援を行って、大きすぎるパラドックスを起こしてしまう可能性を無意識に感じてしまい、リミッターが働いたのでは?と思うのです。
 ドラえもんの第1話には、子孫のセワシ君がのび太君の将来を写したアルバムを持参しています。その中は、不幸人生の見本のような写真の羅列に見えますが、唯一社会的な問題を引き起こしていることがあるとすれば、のびた君経営の花火工場が火事により全焼しているのです。
 おそらくドラえもんの派遣者代表セワシ君は、前提参の要件を満たし、前提弐によって前提壱を実証する。そうして当局の認可を得て、ドラえもんを派遣できたと思うのです。
 時間の隔てた世界の孤独に耐え、タイムパラドックスを致命的に起こさないリミッターを備えた存在。それがリターナードラえもん、と思うのです。
 もうひとつ余談ですが、のび太君のいる世界にドラえもんのような存在が他に存在しない。(表に出ていない)理由ですが、先ほどの前提弐の話からある程度説明が付くと思うのです。
 おそらくドラえもんが存在し、それが日常として受け入れられるキャパシティーを持つ地域、それが前提弐から導き出された場所、それがのび太君を取り巻く環境なのでしょう。
 多分セワシ君がしたように、過去世界を支援する存在がいくつもあるかもしれません。しかし前提弐に照らし合わせその存在がその地域や支援される本人に著しい障害が生じるとしたら。未来から来た存在といきなり言われ、その存在を疑われるぐらいならともかく、それを信じたうえ、支援者の力を悪用するなどetcetc
 そういったことから、ほとんど表に出ない形で支援する存在はいるかもしれませんが、ドラえもんのような存在は、稀有なのでしょう。
11/03/28 23:21更新 /

■作者メッセージ
 夢たっぷりの未来の世界も、大人の目から見れば・・・・ということ。
 ぱっと見、ドラえもんというキャラクターは、のびた君を助ける未来からの夢の使者ですが、当の本人の立場はどうよ?と言う疑問があった訳なんです。
 時間が動けば、そこは異世界なんです。TRPGするときぐらい、そこを意識したいですね。

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