読切駄文
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阿部礼治の逆襲
 フィリップ・K・ディックって小説家、知ってるかい?
 昔しゃ書評じゃ、「サラリーマンが朝目を覚まし、歯を磨くところ」から始まる小説を書くヤツってぇ話だ。
 まぁ、こう書くと、そんな小説の何が読みどころかと、小一時間質問攻めは間違いなさそうです。
 そういえばこのフィリップ・K・ディック様は、SF小説家だったそうで、ドラッグで酔いつぶれたところを書かせれば、多分最強の作家様だったと思う。
 今でも有効なTRPG上の呪い、
「TRPGのキャラクターは、一般人より一線引いた強さを持つ」
に、ついて、また蒸し返したいというわけです。
 でもって今回は普通の人々に焦点を当てみましょう。
 さてこのごろのTRPGシステムでキャラクターを、えいや!と、作成すると、何の因果か人外の人々が簡単にできてしまいます。多少の誘惑と中弐の心を赦してしまうと、もう人間なんてやってられませんよ。
 えぇ、無理くり生物学的にはっきり言えば、人のDNAを持たない存在がパコパコできあがってしまうんですねぇ。どちらかと言えば、DNA縛りからも大きく外れる存在と言うべきでしょう。
 TRPGそのものが、お手軽非日常体験アトラクションであるならば、そんなところにどっぷりでも問題ない訳なんですが、悪い意味でそのどっぷりに慣れてしまうと、思わぬ方々から逆襲を貰うことがあるのです。
 た〜と〜え〜ば〜
 今日も今日とて、TRPGって非生産的な精神活動を始めたとしましょう。やっぱり、このごろのシステムに中弐の魂を注入して出来たキャラクターは、人外魔境まっただ中のそんな感じのキャラクター。仮にこのキャラクターを「人外くん」としてきましょう。
 見当は付いてると思いますが、キャラクターが人外って事は、ゲーム内の一般社会には、すっごく秘密です。
 今日のシナリヲで、人外くんがすべきことは、とってもシンプル「あるNPCを守れ」です。やっぱりここはお約束、そのNPCは、どこに出しても恥ずかしくない一般ピィポォ〜です。
 このNPCにも名前の一つもつけておきましょう。仮に「一っちゃん」ということで、この一っちゃん、世界の裏とは縁もゆかりもない方で、常識の範囲が我が人生!の可憐で儚い存在。モチベのために萌え系のキャラとでもしておきましょうか。
 人という生き物の脳は、使わない部分があるとその部分が長期バカンスを取得してしまう特性があります。そして人によっては、そのままバカンス先に永住してしまうと言う残念な結果となります。
 もし人外くんの中身の人が、こういった人非人と一般人のすりあわせのことなんか全く考えて無かったとすると・・・
 ケース1:一っちゃんの目の前で、人外くんならではの超絶必殺技を使う。
 ・・・1回目ですので、一っちゃんも目の錯覚何かの見間違いあたりで納得するでしょう。
 ケース2:一っちゃんの目の前で、人外くんとその同類君とが見るからに妖しいコミュニケーションをとる。
 ・・・一っちゃん、お人好しでも常識人でも、そろそろ人外くんを疑い始めるでしょう。
 ケース3:人外くん、脳活動があまりにヘタレなため、一っちゃんをこっち側世界にお持ち帰りすればお仕事が楽だと思い、そう行動する。
 いやぁ、超絶世界の住人一っちゃんのできあがり!めでたしめでたし・・・そんな訳あるか!!
 笑い話風にしておりますが、人外世界と一般人との摺り合わせなんて事を考えず、似たようなことをやっちゃったなんて話もそこそこ聴きますし、現場もよく目にしております。みんなも、喉の手前まで「お前、ど〜すんだよ」と言いかかったことはないかい?
 う〜む、ここまでは、人外くんの中身の人が必要以上に愉快であり、この愉快な思考形態が、このような喜劇を招いたように書いてますが、この頃のTRPGシステム、一般人の扱いが大概だなと思わせるところもあるのです。
 ほら、キャラクターの分け方に、スタンドアロン・トループ・そしてモブってあるでしょう。TRPGと言う限られた状況の中で、ゲームをうまく運用すべく考え出された画期的概念かも知れません。でも、人間存在を書き割りと見なすって概念、どっか恐ろしい気がするのは気のせいか?
 人外魔境の力を持つ存在、それも圧倒的に少数派の存在となれば、一般社会からはじかれるのが宿命です。
 それをテーマに多作品も多く発表されており目にしたことが必ずあるモチーフだと思います。
 だからこそ、その認識を意識しない行動は、生暖かい視線を招くか、あなたの評価を残念くんで纏めてしまうなどの結果を招きます。
 TRPGはコミュニケーションの遊びです。表向きの能力が高いだけの鼻つまみ者にはツライ世界ですよ。
 では今日も良いTRPGライフを!!!

平成22年9月例会会報
11/03/31 00:50更新 /

■作者メッセージ
 フィリップ・K・ディックと言えば、ブレードランナー!
 それはさておき、これも、誰かの面白TRPGライフに巻き込まれたときの憤りから生まれた文章だと思う。
 崩れゆく日常を惜しめと言う建前から外れ逸脱するよりも、そこを守って四苦八苦する方が、キャラがたつ。そう思いもした時の感想ですね。
 阿部礼治は、AVERAGEのアナグラムより。

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