読切駄文
[TOP]
士に至る病
 今回はなんだか武士道や騎士道、特に騎士道って物を斜めから見てやろうと言うことですが、この士道ってやつ、実はあんまり好きではない。そのおつもりで。
 一般的に、武士道や騎士道のイメージを見ていくと、己を律し、文武を嗜み、弱きを助け、名誉は命がけで守るという処でしょうか?
 これ以上語ると、冷静な人が引きそうなので、やめ。
 さてこんなカッックいいことずくめの武士様騎士様ですが、なんだかこういった人たちの本質から全力で目を背けている気がするんです。この武士様騎士様の本質って、暴力が具現化した存在なんだってことを。
 十分な殺傷能力のある武器を手に、ガチガチで威嚇効果抜群の鎧を着込み、移動は馬を使いこなす。ギャグや変化球・ファンタジーをなしにすれば、騎士とケンカして勝てるのは騎士だけとしか思えない。
 そして騎士の暴力は、他の存在を簡単に圧倒するのです。
 暴力といった面から見れば、こっちの生命の危険と直結する荒くれ者と見えます。仮にその暴力をネタに利益をがっぽり貰おうとしたなら・・・まぁ、はじめはナントカなるでしょうが長続きなんて無理無理。悪、つまり周囲世間の不利益が栄えた試しはないのですから。
 オチの一つとしては、周囲世間の集団暴力からノされてしまうといったところでしょうか?
 そう、暴力というのは、「振るう気何てありません」とちょっとやそっと主張したぐらいでは、警戒なんて解いてくれないほど脅威であり、騎士というのは、それそのものの存在だと自ら言ってる様な物です。
 そして、暴力の権化となった我が、周囲とうまくやっていくにはどうするか。答えは今も昔もそう変わりません、印象の善し悪しが大きく左右するのです。
 先ほど騎士様のことをカックいいなどと揶揄しましたが、例えば、西洋ファンタジーの騎士なりの完全装備をした人物を二人用意して、一方がまっとうな騎士の場合と、他方が冷酷非道な山賊という選択肢があるとしましょう。アナタが吹けば飛ぶような庶民様だとして、ついて行くのはどっち?(山賊と答えた方、以降の文章は必要ありません。お疲れ様でした)
 意地の悪い言い方をすると、騎士の暴力性を世間にすりあわせる方法として、騎士道を使っているとしか思えないのです。
 さらに、騎士のお仕事とはなにか?1にも2にも戦うことなのです。
 普通の人々庶民様は、生きていくために、衣食住を維持することを仕事としています。衣食住の維持ってお仕事は、それはそれは手間と時間のかかるお仕事なので、それ以外のことをしている余裕はなかなかないのです。
 そのような庶民様の目から見た騎士という存在、なんとイビツで殺気に満ちた存在でしょう。
 そのギャップ、超えがたい溝となっている互いの温度差を緩和する物は何か、それこそが騎士道と言われる行動様式を示すことだと思うのです。
 庶民様からすれば、騎士が騎士道を謳いそのように行動する限り、騎士様から痛い目には遭わない、そう考えるのです。
 何せ騎士道って行動様式は、そん所そこいらの庶民様には真似が出来ないほど、手間と精神力が必要なんです。
 戦う力を十分に秘め、一般庶民には理解しがたい理屈でこっちにその暴力を向けない、しかもなんだか立派なことを言う。
 ほら、ボケ〜とした庶民様が騎士様を眺めていると、「大したお方だ」鼻水垂らしてつぶやいてしまうでしょう。
 蛇足ながら、この騎士道という、メンツを作り上げそれを守るシステムにも、巧妙なギミックが仕込まれているんです。そうそれは、名誉は命がけで守るという部分。
 又々庶民様の視線で事を見ていくと、騎士様をバカにするととんでもない損な目に遭うと言うことなんです。
 何せ向こうは、恥をかかされよう物なら命はいらぬが、メンツが大事。恥をかかせた相手もそうだろうと勝手に解釈し、血相変えてケンカしてきます。庶民様からすれば、名誉>命なんて気違い沙汰に付き合ってなんていられません。というのが本音。
 私見ですが、本来暴力の具現である騎士という存在は、騎士道というツールを手に、庶民様と生活出来たわけです。庶民様は庶民様で暴力とは無縁な存在ですが、理不尽な暴力に曝されたとき、守られるチャンスを得たわけです。
 TRPGの始まりが中世西洋風ファンタジーなら、どこかで必ず目にするのが、騎士というもの。チャンスがあればプレイヤーが騎士というキャラクターを持つ可能性すらあります。
 己がカックいい騎士や、イけてる騎士を目指すのであれば、何かを背中に背負っているぐらいでないと様にならないと思うのです。えぇ、昔々のリアルの騎士様達も多分数多くの庶民様を背にして戦ってきたと思うのです。
 ならば、PCなりNPCなりを守る対象にしたいなんて思うでしょう。ならばアナタはそのPCかNPCに対し、「アナタを守って見せます」と言った途端その言葉の意味は次のように変換されます。「アナタの戦う力は不要、むしろ我が暴力の邪魔」騎士が誰かを守るってそういうことなんです。
 そんな状況すら不要、「今」は主君などを捜す自由騎士だ。というのなら、それこそアナタの存在がその志に応じ、侵略者から山賊をはじめとするゴロツキ扱いを甘んじて受けてください。要件の欠けた騎士の騎士道なんて「暴走します」という看板を掲げているような存在ですから。
 もう一度言います。騎士は好きになれない。特に脳天気なカックよさしか見えてこないペラペラ騎士なんてもうダメ。
 それでも、暴力という狂気と騎士道という理性を併せ持ち、騎士道の老獪な仕組みをわきまえつつ、それでも真に騎士だといえるなら、ちょっとは笑顔で手をさしのべてみたい、とは思います。

平成22年2月例会掲載
14/09/21 23:53更新 /

■作者メッセージ
 騎士道大好きな友人を、全面的におちょくった文章。
 それと、騎士様ロールプレイがどうしてもスベって見えるのはどういうわけか?と思い、へりくつを構築する。
 正直、騎士武士は、好きになれないな〜。

TOP | RSS


■感想メッセージ
Name: Mail:

※メッセージのみor評価のみの投稿もできます。
−評価−





TOP

まろやか投稿小説 Ver1.53c