読切駄文
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使いすぎ注意
 TRPGの支援で花形と言えば、ヒールをはじめとする身体回復系の術でしょう。
 味方が、叩かれ、斬られ、突かれ、魔法で焙られようとも、その身体ダメージを回復させてしまう術は、TRPGの戦闘に不可欠な要素でしょう(例外多数)
 さて、こういったヒットポイントを回復する術(ここでは一括りにヒールとします)をかけられた対象がどうなってしまうのかをちょっと見てみましょう。
 まず、怪我が治る普通のプロセスがどういった感じかというと、傷周辺の細胞がどんどん分裂を繰り返し、傷で失った細胞を補っていくという働きが、それ相応の時間をかけて行なわれます。
 ここでヒールを使うと、その細胞の分裂が加速されるのでしょうか。まぁ、普通なら数日かけて回復する怪我が、ん十倍かん百倍の速度で治っていってもらおうと言うのがヒールなのでしょう。
 そうなると、ちょっと困った現象が起こると思うのです。
生物の細胞には、テロメアという物質によって分裂できる回数が決められていると言われています。そう、細胞が分裂する度に、テロメアが少しずつ減っていくという感じでしょうか。
 テロメアの減少は単に細胞の分裂回数の問題だけでなく、テロメアが減っているという事は、細胞自体も劣化しているという事になるのです。わかりやすく言えば、それは老化という事です。
 と言ったわけで、ダメージを負う度、調子に乗ってバカスカヒールをかけられていると、老化が早くなるという現象に見舞われます。道理で冒険者の寿命は短いわけです。
 いや、ここはヒールの能力を上げ、細胞の劣化さえ抑える、つまりはテロメアの減少無しで回復させてしまえばいい。これは一見よさげな発想ではありますが、テロメアの減らない細胞の代表と言えば、実はがん細胞です。う〜む、ヒールに発がん性を持たせるのは、どうかと思うのです。
 細胞の分裂に頼らないヒールを模索しましょうという事で、時間逆行による「ダメージの無かった身体に戻る」というヒールの方法をとる事もあります。
ただその場合、量子力学に無理難題をふっかける事になります。時間軸をはじめとするパラレルワールドを超えることは難しいですよと、量子力学はおっしゃっております。
 そう、そんな無理難題をクリアできるのなら、傷の回復なんかに使うより、世界法則の支配者になる方をお奨めします。
 また、ルール的な解釈の一つとして身体ダメージの定義が、身体そのものへのダメージと痛覚がちゃんぽんになっている場合はどうか。
 身体はさておき、痛覚そのものを和らげるというのがヒールの役目になる世界では、そんな術をかけられた側はどうなってしまうのか。そう、痛みがないのですから、負傷ダメージを無視して無理をして、かえって身体に深刻なダメージが発生しかねません。
 それと余談ですが、痛覚云々を和らげる一般的な方法が、アドレナリンやエンドルフィンをバカスカ垂れ流す方法ですが、これに被術者が慣れてしまうと、立派な真性M君が目覚めてしまうのではないかと、心配してしまいます。
HPの回復は、個人の生命の危機を回避する重要な手段ですが、その理屈を知らず無闇矢鱈と使えば、副作用でエライ目に遭うような気がします。えぇ、これは薬と言われる物全てに通じる事です。
 上のイチャモンから推測すると、冒険者と言えど、「無事これ名馬」って事になるような気がするんです。
 本当、注意1秒怪我一生って心構えで、今日のゲームを頑張ってください。

2009年9月掲載分
11/03/29 00:49更新 /

■作者メッセージ
 回復に関するイチャモンはいつも考えていたことです。
 回復魔法に関するディテールを出せば出すほど、この駄文のように人体に長期的ダメージなんかが降りかかるんでしょうね。

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「リンダキューブ」の治療薬がもろに「痛覚を消す麻薬」って言ってた気がしますね。
 草薙 武尊 11/04/19 01:54 評価:面白かった。
興・沈精神剤が、肉体のダメージを治すのは、モロまやかしだと、普通は思うでしょう。
使う側がそれを知ってれば、「死ぬまで戦え」と呪の文句をたれているような物。
「麻薬的精神干渉薬物で体の傷が治る」世界は、ひいては、精神が物理的現象に干渉すると言うことなので、想像を巡らせれば、SF小説になります。
でも回復薬ほしさにそんな世界にいるのは、危ないと思いますよ。そんな世界では「シネ」と説得させると、自然死を迎えるわけですからw
  11/04/21 19:49

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